転勤になった!持ち家、売る?貸す?(「住宅ローンが残っている方」編)

マイホームを購入した途端に「転勤辞令」これ、アリアリの話です。会社側の考えは、「住宅ローンを組んだのだから、簡単には辞められないだろう!」と言わんばかりのタイミング。
まぁ、今の時代、このようなことは減ったようですが、昔は珍しくなかったとか・・。しかし、「転勤辞令」、業種や職種によっては今でも普通の話です。
ただ、、住宅ローンを抱えている方にとっては、悩ましい問題です。今まで様々な転勤族のお客様の住み替えをサポートさせて頂いた私たちが、「転勤になった時、売却・賃貸のどちらが良いのか」を見極めるポイントについて、メリットとデメリットを比較しながらわかりやすく解説します。

 

1.売却のメリット・デメリット
1-1.売却のメリット)

①経済的負担が減り、また、ゆとりができる。
持ち家を売却した売却代金で住宅ローンの返済を行い、今まで負担となっていた毎月の返済を終わらすことが出来ます。(変動金利を選択している方にとっては、金利変動リスクも回避できます。)
また、売却金額によっても異なりますが、住宅ローン残債以上の価格で売却できれば手元資金が残り、経済的にもゆとりが持てます。これが最大のメリットではないでしょうか。

②ランニングコストが不要となる。
毎年発生する固定資産税や、マンション所有の場合に必要な管理費・修繕積立金など、所有している限り必ずかかるランニングコストの負担もなくなります。

③維持管理が不要となる。
所有する=維持管理するということです。住宅は定期的な部屋の風通しや通水をしなければ建具や設備の劣化進行が早まります。特に一戸建の場合は建物の躯体にも影響する可能性がある資産価値の低下にも繋がります。しかし、家を売却すれば、そのような維持管理から解放され、作業負担や精神的負担もなくなります。

④不動産相場の下落リスクがなくなる。
不動産は株式や債券とは異なり、相場変動のリスクが低い資産です。しかし、景気や経済動向によって相場の変動が無い訳ではありません。今、売却することによって、将来的な不動産の下落リスクを無くし、現在の相場で売却価格を確定させることが出来ます。

 

1-2.売却のデメリット)

①希望条件で売却出来ない可能性あり。
「売却のメリット」の逆の話になりますが、住宅ローン残債よりも低い売却となる場合、手持ち資金等の追い金にて売却しなければならない。

②住宅ローン控除などの住宅ローン利用メリットがなくなる。
住宅ローンを借りている方の多くが、住宅ローン控除を受けていると思います。住宅ローンの利用時や購入物件などによって利用詳細は異なりますが、持ち家売却=住宅ローン完済に伴い、住宅ローン控除がなくなります。また、ローン借入時に加入していたオプション付きの団体信用生命保険(例えば、がん団信特約付や三大疾病特約付など)についても当然ながら解約(終了)となります。

③経済動向に伴う保有資産(財産)リスク分散の懸念
これは、個々の考え方や資産状況よっても異なりますが、持ち家を売却することによって「不動産」という資産を持たなくなる方に対してのリスクです。よく、資産(財産)は「不動産・株式・債権の3つに分けて分散させろ」と言われます。これを「財産3分法」と言います。昔から、不動産は安定資産と言われています。持ち家を売却して所有する不動産を持たなくなった方は、今後の経済動向の大きな変動によって、個人資産についても変動リスクが高まる可能性があります。逆に、住宅ローンが残っていても持ち家があることで経済変動リスクに対応する環境維持にも繋がります。

④不動産相場の値上がり益が期待できない。
上記、売却のメリット④(不動産相場の下落リスクがなくなる。)の逆のことですが、持ち家の条件や経済動向によっては、値上がりを期待できるものもあります。しかし、売却することによって、利益を得る可能性の芽を無くしてしまいます。

上記が、持ち家の売却のメリット・デメリットです。次に持ち家を賃貸する場合のメリットデメリットをご説明いたします。

2.賃貸活用のメリット・デメリット
2-1.賃貸活用のメリット)

①毎月受け取る賃料を住宅ローン返済に充当できる。
持ち家を賃貸した場合、賃貸借契約に定められた賃料を毎月受け取ります。この賃料を毎月の住宅ローン返済に充当して返済負担を無くします。また、賃貸条件によっては、年2回のボーナス分の返済を賄ってもまだ余る金額の受領賃料となるケースも珍しくありません。(年間の住宅ローン返済額+固定資産税額等のランニングコストの合計額よりも、年間受領する賃料の方が多いケースも多く見受けられます。)

②将来、その家に戻って住むことが出来る。
これは、上記①にて経済的維持負担を軽減することによって活かされるメリットです。転勤期間が決まっている場合や、将来、またご自宅に戻りたいとお考えの場合、住まない期間だけ賃貸活用すれば、また戻って住むことも可能です。

③資産を残すことが出来る。
持ち家=資産(財産)です。賃貸活用のメリット①の通り、毎月のローン返済が完了すれば、賃料収入の大部分が手元に残ります。持ち家が生活資金を生み出してくれる収益資産となります。

2-2.賃貸活用のデメリット)

①ランニングコストや修繕費がかかる。
ご周知の通り、マイホームや不動産を所有する限り、固定資産税がかかります。また、賃貸活用中には、設備の故障などに対する修繕費用なども負担する必要があります。売却せずに賃貸活用するということは、ランニングコストや修繕費の負担義務が発生します。

②自宅に戻りたくても直ぐに住めない可能性がある。
これは、賃貸活用のメリット②の逆のことですが、売却せずに賃貸活用する目的の一つに「将来、また自宅に戻るために、転勤期間だけ賃貸する」という方もおられますが、自分達が戻るタイミングと賃貸が終了するタイミングが必ず一致するとは限りません。その場合は、別のお住まいを探す必要があります。

③賃貸期間中は、住宅ローン控除が利用できない。
住宅ローン控除を受けている方は、賃貸期間中の住宅ローン控除の適用条件から外れます。しかし、賃貸活用終了後、自宅に戻って再居住したとき、住宅ローン控除の期間が残っている場合は、再度、適用を受けることが出来ます。

※住宅ローンが残っている方が、持ち家を賃貸活用する場合の注意事項

住宅ローンの申し込み当時、銀行担当者から、以下のような説明を受けたご記憶はございませんか。又、金銭消費貸借契約関係書類に、次のような内容の文章が記載されていると思います。
「住宅ローンはあくまでも自己居住用を目的とした融資につき、住宅ローンが残っている状態で賃貸活用は出来ません。万一、その住宅を賃貸活用した場合は、全額返済して頂きます。」

このような約定があれば住宅ローンが残っている限り、賃貸活用が出来ないというのが原則です。しかし、転勤や家庭事情により、やむを得ない事由がある場合は、融資元の金融機関に申請することで、賃貸活用が可能となるケースが殆どです。
つきましては、住宅ローンが残っている方で転勤などの理由により賃貸活用する場合は、金融機関に申請の上、準備行いましょう。

3.売却・賃貸のどちらが良いのか見極める方法
3-1.持ち家の「売却した場合の価格」と「賃貸した場合の賃料」を確認する。
持ち家が「いくらで売却が可能なのか」「いくらで賃貸が可能なのか」を先ずは把握することが先決です。そのためには、売却査定と賃貸シュミレーションを同時に行ってくれる不動産会社に依頼しましょう。

3-2.「売却査定額とローン残債」「賃料条件とローン返済額」をそれぞれ比較する。
売却査定額と住宅ローン残債を比べて住宅ローン残債の方が多い場合は、原則、賃貸活用を検討しましょう。また、年間賃料収入よりも年間の住宅ローン返済額及び固定資産税などのランニングコストの合計額が多い場合は、原則、売却を検討しましょう。尚、上記の両方に該当している場合や逆に両方とも該当していない場合、その他判断が難しい場合は、以下の条件を目安にお検討頂ければと思います。

■売却を検討した方が望ましい場合
・築年数が浅い住宅(理由:年数経過に伴う建物評価減リスクがあるため。)

■賃貸活用を検討した方が望ましい場合
・一戸建て住宅(理由:マンションのような管理費等のランニングコストがかからないため。)

 

最後に・・
売却と賃貸のどちらにするのか悩まれた場合は、先ず賃貸活用の可能性を検討してみて下さい。そして、キャッシュフローや諸条件で賃貸活用が難しいとなれば売却を選択するという順番の流れでご決定頂ければ良いのではないかと思います。理由は、即売却よりも、一定期間賃貸活用行った上で売却処分する方が、収益性が高くなる傾向があるからです。しかし、物件種類や築年数・その他条件環境などによって異なることから、どうしても判断悩む状況であれば売却・賃貸の同時活動を行った上で、先に決まった方にする方法もあります。
可能な限り、持ち家の価値の最大化を検討してみましょう。

 

 

 

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